白内障手術で使われる眼内レンズについて徹底解説します。
目の水晶体が混濁する白内障が進行した場合、人口水晶体である眼内レンズに入れ替える手術が必要。単焦点眼内レンズが多く使用されますが、より広い範囲にピントが合う多焦点眼内レンズもあります。
この記事では、眼内レンズの基本情報・費用・選び方を詳しく解説。手術の必要がない白内障初期に効果が期待できるストレスフリー療法についても紹介します。
白内障手術の予定のある方に読んで頂きたい内容です。
監修者:佐藤琢紀(サトウ タクノリ)
銀座数寄屋橋クリニック院長
2004年東北大学医学部卒業後、国立国際医療センターで研修医として入職。2019年には国立国際医療研究センター国府台病院救急科診療科長に就任。18年間救急医として約36,000人の診療経験を通じ、現行医療の限界を認識。元氣で楽しい人生を歩むための戦略の重要性を感じる中、ストレスフリー療法と出会い、その効果に感銘を受ける。これを多くの人に広めるべく、2024年4月より銀座数寄屋橋クリニックでストレスフリー療法に特化した診療を行っている。
銀座数寄屋橋クリニックはこちら。
眼内レンズとは
白内障が進行し日常生活に支障がある場合、視力回復のための手術が必要です。濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入します。
眼内レンズは、直径6mm程度の円形の本体部とレンズを固定する2本の支持部で構成されています。柔らかいアクリル製が一般的。折り畳んだ状態で目の中に挿入します。
折り畳むことで切開創は小さくなるのに加え、傷の直りが早く、感染症リスクを減らせることがメリットです。
眼内レンズに寿命はなく半永久的に使用できますが、レンズの脱臼が生じた場合など、再手術をすることもあります。
眼内レンズは、大きく分けると以下の2種類です。
単焦点眼内レンズ
遠近どちらかにピントを合わせ、ピントが合う1点がはっきり見えるようになります。
多焦点眼内レンズ
遠近どちらにもピントが合い、手元から遠くまでよく見えるため、メガネの使用頻度を減らすことが可能です。
眼内レンズの費用
ここでは、眼内レンズの費用も含めた白内障の手術費用の目安を紹介します。
白内障の手術は保険適用・選定療養・自由診療のいずれかです。レンズの種類や術式により、自己負担割合・費用が大きく異なります。
一般的な超音波乳化吸引術における費用の目安は以下の通りです。最新式の「レーザー手術」は「自由診療」なので、全額自己負担。
① 単焦点眼内レンズ
保険適用で自己負担割合は1~3割。
日帰り手術の場合、片目あたりの費用の目安は3割負担で45.000~60,000円程度です。
② 多焦点眼内レンズ
多焦点眼内レンズは選定療養の対象になります。
多焦点眼内レンズに関連する費用を追加で支払うことにより、保険適用の治療と適用外の治療を併せて受けられます。この追加分は保険適用外で全額自己負担。
日帰り手術の場合、乱視なしのレンズで片目あたりの費用の目安は3割負担。80.000~370,000円程度です。
国内未承認の輸入レンズの場合は自由診療のため、全額自己負担になります。
眼内レンズの選び方
眼内レンズは合わせるピントの数によって、大きく単焦点と多焦点の2つに分けられます。
多焦点眼内レンズは多種多様。ライフスタイルなどに合わせたレンズを選ぶことが可能です。
ここでは、眼内レンズを選ぶ際に着目すべきポイントを紹介します。
日常生活で見ている距離・見たい距離
自身に適した眼内レンズを選ぶには、日常生活の中で一番見ている距離・見たい距離を考えることが重要です。
① 単焦点眼内レンズ
選択できる焦点距離は、遠方、中間、近方のいずれか1つです。
② 多焦点眼内レンズ
複数の距離にピントを合わせられます。選択できる焦点距離は以下の通り。
- 2焦点レンズ:遠・中・近のうち、いずれか2箇所に焦点が合う
- 3焦点レンズ:遠・中・近の3箇所すべてに焦点が合う
- 焦点深度拡張型レンズ:遠方から近方にかけて切れ目なく焦点が合う
ライフスタイル
趣味や仕事など、生活の中で大切にしているものから眼内レンズを選びます。
自身のライフスタイルの中で最も見たい範囲が裸眼でクリアに見える眼内レンズが自身に適したレンズです。
日常生活における距離の目安は以下の通り。
① 遠方
- 車の運転、スポーツ(5m以上)
- テレビ鑑賞、映画鑑賞(2~3m)
② 中間
- 料理、買い物、メイク(1m)
- 食事、パソコン作業、事務作業(60cm)
③ 近方
- 手紙を書く、絵を描く(50cm)
- 読書、裁縫、スマートフォンを見る(40cm)
メガネをかけたくないかどうか
メガネにできるだけ依存しない生活を送りたいかどうかも、重要なポイントです。
① 単焦点眼内レンズ
ピントを1点のみに合わせるため、ピントが合わない距離を見る際にメガネが必要になります。
遠方にピントを合わせた場合は、近距離のものを見る際に老眼鏡が必要です。逆に、近方にピントを合わせた場合は、遠距離のものを見るために近視用のメガネが必要。
② 多焦点眼内レンズ
複数の箇所にピントを合わせられるため、メガネへの依存度を減らした生活が可能です。
アウトドアやスポーツ、旅行などでメガネを気にせずに楽しめる点が大きなメリット。多くの場面で自由度が増し、生活の質が大きく向上します。
乱視の有無
白内障とともに乱視がある人の場合、乱視の矯正も可能なトーリック眼内レンズがあります。
乱視が軽減され、視力の向上が期待できる点がメリット。単焦点・多焦点眼内レンズのどちらにもトーリック眼内レンズが存在します。
乱視には、水晶体乱視と角膜乱視があります。
水晶体に原因がある水晶体乱視は白内障手術により、水晶体を眼内レンズに入れ替えることで改善可能です。
角膜のゆがみなどが原因の角膜乱視が一定以上ある場合、トーリック眼内レンズが選択されます。
すべての乱視が適応となるわけでないため、注意が必要。
眼内レンズとICLの違い
眼内レンズ(IOL)によく似た名称の眼内コンタクトレンズ(ICL)について、耳にしたことがある人もいると思います。
ICLはソフトコンタクトレンズに似た素材のレンズ。目の中にICLを挿入し、近視・遠視・乱視を矯正する視力回復手術です。白内障の治療とは関係ありません。
目の虹彩の後ろにICLを挿入することで屈折力を変え、視力を回復させます。
コンタクトレンズのように日常生活の中で外れる心配もなく、異物感もないため裸眼と同等の快適さです。
それ以外にも、取り外し可能・近視の戻りが少ない・ドライアイになりにくい・レーシックのように角膜を削らないなどのメリットがあります。
目のコンディションをサポートするストレスフリー療法
近年は手術が必要でない白内障の初期段階において、全身の血流や自律神経を整えて目のコンディションを根本からサポートするストレスフリー療法も注目されています。
医師と相談し、進行度や症状に応じた治療法を選ぶことが重要です。
ストレスフリー療法とは
ストレスフリー療法とは、身体の特定の6点に直径1cmの導子をつけ、遠赤外線を30~60分照射する温熱療法です。
ストレスホルモンの低減・血流の大幅な増加といった効果が確認されています。高血圧・糖尿病・白内障・認知症・不眠症・冷え症など、さまざまな病気の症状を改善する効果が期待できます。
白内障の改善にも期待
眼球の中には房水と呼ばれる体液が流れており、角膜・水晶体・硝子体などの組織に栄養を与える役割を担っています。
ストレスフリー療法で全身の血流を改善し、眼球中の房水の循環も高めることにより、白内障の改善効果が期待できます。
まとめ
今回は、白内障手術で使われる眼内レンズの費用や選び方を解説しました。
- 遠近どちらかにピントを合わせる単焦点眼内レンズと遠近どちらにもピントが合う多焦点眼内レンズがある
- 単焦点眼内レンズは保険適用されるのに加え、費用は45.000~60,000円程度
- 多焦点眼内レンズは選定療養なのに加え、180.000~370,000円程度
- 選び方のポイントは見たい距離・ライフスタイル・メガネへの依存度・乱視の有無など
- 白内障初期段階の治療法として、血流改善効果のあるストレスフリー療法にも期待
事前に医師とよく相談し、納得した上で自身に最適な眼内レンズを選択してください。